アリの生態・・種蒔きした場所に巣を作るアリ & アリはコマツナの種が好き? The ecology of ants・・Ants building their nests at the area of planting seeds & Ants can smell tasty seeds
こんにちは。
栽培中の野菜が食害されたりすると、その原因となるものに興味で頭が一杯になり、どうにかして原因を知りたい衝動に駆られてしまいます。
以前、ホウレンソウはナメクジに食害されず収穫できるのです~・・と記載したのですが、ホウレンソウにあって、他の葉物野菜にないもの・・と考えると、アク(独特の苦み) でしょうか!?
餌のない冬場には、鳥に食いちぎられるコマツナに対し、ホウレンソウは鳥の食害に合うこともなく(我が家の畑での観察による)、発芽さえすれば敵が少ない育てやすい葉物野菜なのではないか・・? と感じます。
他にアク、苦みのある野菜というと、同じ葉物野菜ではシュンギクもそうです。
ホウレンソウの苦み成分はシュウ酸というものらしいですが、シュンギクの苦み成分はポリフェノールが主でシュウ酸はホウレンソウの4%しか含んでいないということです。
また、苦い代表的野菜である、ゴーヤの苦み成分はククルビタシン、というもので、苦み成分はそれぞれ別物であるようです。
ただ苦い、が原因なのか、もしくは、ある成分だけを避けるのか、早速解明すべく観察を始めました。
と言っても研究所ではないので、サツマイモ苗を植えたばかりの畝の端にホウレンソウ、コマツナ(ナメクジも鳥も好物)、シュンギクの種を撒いてみただけの簡素な実験場。
* ちなみに、ホウレンソウのみ薬剤処理をしている旨、種袋の裏に記載があります。
シュンギクは発芽したのですが、ホウレンソウ、コマツナは発芽しません、土深く種を撒いてしまったのか種蒔き失敗です。
ホウレンソウ、コマツナ、シュンギク、の順に種蒔き。
いち早く、シュンギクが発芽しました。
種を植えた翌日には、コマツナを植えた場所だけ3,4か所のアリの巣ができていて、沢山の2ミリ程のアリが動き回っていました。
この段階では何も気づきませんでしたが・・。
すでに発芽したシュンギクには、アリの姿は見られません。
既に発芽しているシュンギク、ホウレンソウの種蒔き場所にはアリの姿は見られません。
* 数年前にゴーヤのグリーンカーテン場所で、面白い光景を目にしたことを思い出しました。
ゴーヤの実がすっかり熟し割れて赤い実をまとった種が地面に落ちていたのですが、1匹のアリがその落ちた赤い実をまとった種に近づいてきて頭をつける感じに見えました。(食したのではないかと思われます。)
その瞬間、アリの動きは固まり、次の瞬間、慌てふためいて(キャー、たしゅけてー とパニック状態になっているような感じになって。)一目散に逃げ帰ってしまった、という表現がピッタリという光景に出会いました。
アリの動きが、まるで面白漫画の1コマのようでした。
2回目、ホウレンソウ、コマツナの種蒔き
発芽したシュンギクを除き、場所を変えてホウレンソウとコマツナの種蒔き2回目をしました。
種蒔き数時間後には、再びコマツナの種蒔き場所のみに沢山のアリの巣ができ2ミリ程のアリの姿が見られました。
ホウレンソウ、シュンギク、コマツナの順。コマツナ種植え場所には複数のアリの巣が点在。
アリの巣を崩し巣ができる、アリの巣を崩し巣ができる、を繰り返しました。
この時点ではじめて、アリがコマツナの種を選んで巣を作っていることに気づきました。
土中でホウレンソウ発芽のころ(地上には発芽は見られないものの土表面が割れたころ)、土表面の割れ目からダンゴムシが見え、ホウレンソウの根、茎等を食しているのではないかと思える光景を見ました。
ダンゴムシの写真がありますので、苦手な方はご注意ください。
翌日、ホウレンソウ種蒔き場所では、土表面が耕されたようになっており発芽したホウレンソウやまだ発芽していないホウレンソウの種が地上に散乱している、という表現が適当で(ダンゴムシ活動の跡ではないかと推測。)、その上を2ミリ程の沢山のアリが動き回っていました。
ダンゴムシの姿は見あたりません。
発芽したホウレンソウ(ほとんどが地上に出る前の姿でホウレンソウの緑色の葉は見られない状態)と種が入り乱れている。
2日後、ホウレンソウ種蒔き場所にはアリの姿はなく、その後ホウレンソウは撒いた種の数には及びませんが成長しています。
コマツナの発芽は見られません。
ホウレンソウは発芽し成長。コマツナの発芽は見られません。
ここに至るまで、ナメクジによる食害とみられる痕跡はありません。
3回目、コマツナのみの種蒔き
コマツナのみを再び種蒔きしました。
数時間後、再び沢山のアリの巣ができていますが、今回は崩すのを止め、乾燥しないよう水やりだけをしてその後の経緯を観察することにしました。
コマツナ種蒔き場所に再び見られるアリの巣。
シュンギクは成長中。食害の跡はなくきれいな葉。
ホウレンソウ葉先にところどころ損傷が見られます。
土中でのダンゴムシによるものかどうかは不明です。
観察するにあたって、アリの生態を知ることは必須ですので、調べたことを簡単にまとめてみました。
アリの生態についてのミニ情報・・・
日本に生息するアリは300種近くになり、その食性もさまざまですが雑食性であり植物の種子も食すると言われています。
植物には、種子一部にエライオソーム(白い色をして脂質や糖から成る。)と言う付属物を持った種子があり、アリはそれを好物とします。
エライオソームの発する匂いに誘われたアリは種子を巣まで運びます。
エライオソーム部分を食し残った種は捨てられ、捨てられた種は発芽する、という植物にとっては生き残るための手段としてアリを利用しているような、まさに計算されたような驚くべき生態系です。
エライオソームの付属物を持った代表的種子はスミレの種です。
* 可憐な容姿のスミレが、エライオソームという付属物を持った代表的種子であるとは、まさに自然界の不思議です。
・・・・・可憐な容姿のスミレちゃん、なかなかの策士です!・・・・・
以上、アリの生態 ミニ情報でした。
本題に戻って、植え付けせず種を置いただけで観察してみることにしました。
ここで、コマツナ、ホウレンソウ、シュンギク、の種をそれぞれ置いて様子を観察・・・
コマツナ、ホウレンソウ、シュンギクの順に置く。
@ 午前8時、上記写真のように種を置きます。
@ 午前10時、コマツナの種のみに2ミリ程度のアリの姿が見られコマツナの種を運ぶのを確認します。
アリの写真がありますので、苦手な方はご注意ください。
1匹のアリがコマツナの種を運んでいる。
@ 午前11時、コマツナの種のみに1つの種に対し2匹で運ぶアリの姿が多くみられます。
黄色矢印がアリ。 青矢印がコマツナの種。
ぶれてしまい写りが悪いのですが、協力してコマツナの種を運ぶアリの姿が見られます。
ホウレンソウ、シュンギク、の種にはアリの姿はみられません。
3回種蒔きしたものの、コマツナは発芽せず種蒔きの都度コマツナ種撒き場所のみにアリの巣ができました。コマツナはいまだ発芽しません。
ナメクジによる食害の跡と思わせるホウレンソウの葉3枚(ちょっと味見した、くらいの食害)を除き、シュンギクとホウレンソウは元気に成長しています。
ナメクジによる食害?と思われるホウレンソウの葉。
アリの生態については、その2、で説明しましたが、植物の種には、エライオソーム(白い色をしていて脂質と糖分を含む)という付着物をもった種がありその匂いに誘われてアリが集まり餌にしエライオソーム以外の種の部分は捨てられ発芽する、という関係にあるのだそうです。
エライオソームの付属物を持っている代表的植物種子はスミレの種なのです。
早速スミレの種を手に入れ見てみると、さすが代表を名乗っているだけあって立派なエライオソームが確認できます。
コマツナの種もアリを誘うエライオソームが付着している、と考えるのが適当であろうかと思いますが、残念ながら種を拡大してもエライオソームが付着しているのかは不明です。
スミレの種。矢印がエライオソームを指す。
コマツナの種。種蒔き時使用。
コマツナの種。置いた際に使用した種。
この後、スミレ、シュンギク、コマツナ、ホウレンソウ、の種をそれぞれ置いて観察
スミレ、シュンギク、コマツナ、ホウレンソウ、の種の順。
スミレの種。 1袋分がこれだけの高価な種。
1時間後様子を見ると、スミレの種が消えていました。なんとか1匹のアリを発見、スミレの種を抱えて、飛ぶような速さで運んでいます。
アリがスミレの種に誘われ運ぶまでの時間の短さには驚かされました。
その行動が素早く写真がぶれていますが。
アリの写真がありますので、苦手な方はご注意ください。
スミレの種のエライオソーム部分をつかんでいるように見える。
約2時間後にコマツナの種を運ぶアリの姿。
* コマツナの種にもいろいろ種類があり、すぐにアリが集まる種とアリの反応が鈍い種があるように感じました。
アリの反応が鈍いと感じた種。(アリを誘うエライオソームの含有量の違い?)
翌日には、コマツナの種はなく、シュンギク、ホウレンソウ、の種の置いてある場所でもアリが活動している姿が見られました。
ここまでの観察から・・・
アリが種子に付着しているエライオソームが好物であることは、スミレの種をいち早く抱えて運んでいる姿で納得できます。
種を運ぶことは、アリにとっては大変な作業で土中に撒かれた種の場所に巣を作る事が運ぶ作業を省略でき労力をかけずたくさんの種を獲得できるのではないか、と考えます。
コマツナの種にアリを誘うエライオソームが付着しているかは残念ながら確認できませんが、コマツナ、ホウレンソウ、シュンギク、の種蒔き時に、コマツナの種蒔き場所にのみにアリが巣を作ることは、コマツナの種はホウレンソウとシュンギクの種よりアリを誘うものが強い、と言えるのでしょう。
もともとの観察目的であるナメクジによる食害に関しては、発芽しないコマツナとの比較はできませんが、気になるほどのナメクジによる食害はなく成長していることからホウレンソウとシュンギク(アク、苦みのある葉物)をナメクジは好まない、と考えられますが未だ推測のままです。
* 年によってナメクジの生息数は異なり当然食害状況も異なるのですが、今年は食害被害から考えるとその数は少ないと思えますので、ナメクジの生息数の多い年に再度観察したいところです。
結局のところ、アリは、好物は種に付着している エライオソーム である、コマツナの種を好んで運ぶ、または、コマツナの種のある所に巣を作る ことが分かります。
種蒔き後にアリの巣ができていたら、それは偶然にできたものではなく、アリが好みの種 であり、アリに選ばれた場所、ということになりますね~。
ですので、アリの好まない種を選ぶことが、種撒き直後のアリの被害で発芽しない場合などの困っている場合の、1つの対策になることと思います。
長い観察記録になってしまいましたが、いかがでしたか?
家庭菜園をするうえで、参考になることがありましたら嬉しいです。
ナメクジによる食害に関しては、改めて報告することにしましょう。
本日はこれにて失礼いたします~。🎎